- 顧客データ活用で競争力アップ
- 10分割で売上への寄与分析
- 定期検証で戦略強化実現
デシル分析とは、顧客を一定期間の購入金額が高い順に並べ、人数がほぼ同じになるように10グループへ分ける分析方法です。顧客ごとの購入金額を比べるだけでなく、グループ別に売上の合計や構成比を確認することで、どの顧客層が売上を支えているかを把握できます。購入金額という一つの指標を使うため、顧客分析に初めて取り組む場合にも始めやすいのが特徴です。
ただし、デシル分析で上位に入った顧客が、必ずしも今後も購入し続けるとは限りません。過去に一度だけ高額商品を購入した人と、何度も継続して購入している人が、同じグループに入ることもあります。分析結果をそのまま顧客の価値や将来の売上とみなすのではなく、対象期間や購入状況を確かめたうえで、施策を考える必要があります。
デシル分析とは何かという基本から、集計に使うデータの選び方、Excelでの分類方法、結果の読み取り方、施策へのつなげ方まで順を追って解説します。RFM分析やABC分析との違い、実務で起こりやすい誤りも取り上げます。数字を並べて終わるのではなく、顧客への働きかけや検証に活かすための考え方を押さえていきましょう。
デシル分析とは、購入金額を基準に顧客を10段階に分ける方法
デシル分析は、購入履歴を顧客単位に集計し、購入金額の大きい順に並べて、顧客数が均等になるよう10グループに分ける顧客分析です。グループは上位からデシル1、デシル2という順に呼び、デシル10が購入金額の少ない層になります。「デシル」は10分の1を意味する言葉に由来します。グループごとに売上の合計や全体に占める割合を算出し、売上への貢献度の違いを捉えます。
分ける基準は顧客の購入金額であり、売上金額そのものを10等分するわけではありません。たとえば購入金額順に並べた顧客を、人数が同じになるよう上から順番に区切ります。その後、各グループの購入金額を合計し、全顧客の購入金額合計に対する比率を計算します。人数をそろえているため、グループ間の売上の差がどの程度あるかを比べやすくなります。
デシル分析で確認する基本項目は、グループごとの顧客数、購入金額の合計、売上構成比、顧客一人あたりの平均購入金額などです。売上構成比は、各デシルの購入金額合計を対象期間全体の購入金額合計で割って求めます。顧客数が同じでも、購入金額の合計に大きな差があれば、売上が一部の層に偏っている可能性があります。平均購入金額も並べると、その差を顧客一人あたりの視点から確認できます。
デシル分析とは、顧客を優良・不良と断定するための判定ではなく、購入金額に基づく相対的な区分です。ある顧客が上位に入るのは、あくまで設定した期間において他の顧客より購入金額が大きかったためです。期間や商品、店舗の範囲を変えれば、同じ人のランクも変わります。したがって「上位顧客」という表現を使うときは、何を基準に、いつのデータで上位なのかを明らかにすることが大切です。
デシル分析で見えることと、実施する目的
デシル分析を行う主な目的は、顧客全体の購入金額を層別に整理し、売上への貢献が大きい層や、今後の働きかけを検討したい層を見つけることです。顧客全員を一つの集団として捉えていると、売上を生み出している層の特徴が見えにくくなります。10段階に分けて構成比を比べることで、施策の対象や優先順位を話し合うための共通の材料が得られます。
結果から分かるのは、対象期間における購入金額の分布です。上位グループが全体売上のどの程度を占めるのか、下位のグループに顧客がどれほどいるのかを整理できます。上位層の売上構成比が高い場合には、その顧客との関係維持が重要な検討課題になります。一方で、下位層の人数が多く、購入が一度で止まっているなら、再購入を促す余地があるかを別のデータとともに考えられます。
売上の構成を把握することは、マーケティング予算や担当者の時間をどこに配分するかを考えるうえでも役立ちます。全顧客に同じ内容を案内するのではなく、グループごとに伝える情報や購入機会を変える案を検討できます。ただし、上位層だけに資源を集中させることが常に適切とは限りません。顧客数の拡大を重視するのか、既存顧客の継続を目指すのかなど、事業上の目的によって注目すべき層は変わります。
デシル分析は、詳しい顧客像を一度に明らかにする分析ではありません。購入金額の違いを起点に、次に確認したい問いを立てるための入口と考えると、活用範囲が明確になります。上位顧客は何を購入しているのか、特定の商品や季節に売上が偏っていないか、購入が最近も続いているかといった問いを、商品情報や購入日などと照らし合わせます。分析の目的を先に決めておけば、集計後に数字を眺めるだけで終わりにくくなります。
分析を始める前に決めるデータの範囲と集計単位
デシル分析の結果を左右するのは、計算方法だけではありません。どの期間の購入を対象にするか、何を顧客として数えるか、売上にどの金額を使うかといった前提が、グループの構成を決めます。前提が曖昧なまま集計すると、担当者ごとに異なる結果になったり、前回の分析と比較できなくなったりします。分析に着手する前に、目的に照らして条件を定め、記録しておきましょう。
対象期間と分析対象を決める
対象期間は、分析で確かめたいことに合わせて設定します。直近の販促施策の対象を決めるなら、最近の購入状況を反映できる期間が適しています。年間の売上構成を振り返るなら、季節ごとの変動を含む期間が候補になります。短い期間では一時的な購入が結果に影響しやすく、長い期間では過去の購入が現在の顧客状況とずれることがあります。期間の長短に正解があるのではなく、意思決定に必要な時間軸と一致しているかが重要です。
分析対象を既存顧客に限るのか、期間内に購入した顧客全員にするのかも決めます。会員登録者全員を含めると、購入がない人は購入金額ゼロの顧客として扱われます。一方、購入者だけを対象とする場合は、購入経験のない会員の状況が集計から外れます。どちらを採用するかで、下位グループの意味が変わるため、レポートには対象者の定義を添えます。新規顧客と継続顧客を分けたい場合は、顧客属性を加えた比較も検討できます。
店舗、商品カテゴリー、販売チャネルなどをどこまで含めるかも、分析目的に合わせて選びます。複数の事業やチャネルをまとめると全体像は見やすくなりますが、購入単価や販売頻度の違いが混ざり、各層の特徴が分かりにくくなる場合があります。たとえば、店舗とオンラインで顧客IDの管理方法が異なれば、同じ人の購入が別々に数えられる可能性があります。統合できるデータかを確認し、比較したい単位に合わせて集計範囲を設計してください。
顧客IDと購入金額の定義をそろえる
顧客を重複なく集計するには、購入履歴を顧客IDなどの識別子でひも付ける必要があります。氏名だけで管理すると、表記の揺れや同姓同名によって同一人物を正しくまとめられないことがあります。会員番号や顧客コードを使う場合も、店舗やシステムをまたいで同じ人に一貫したIDが付与されているか確認します。IDの統合が不十分だと、一人の購入金額が分割され、実際とは異なるデシルに分類されることがあります。
購入金額の定義も統一します。税込・税抜のどちらを使うのか、送料や手数料を含めるのか、値引き後の金額を使うのかを決めます。返品やキャンセルは売上から差し引くのか、取引データから除外するのかも整理が必要です。どの方法が適切かは会計上の目的や社内のデータ管理方法によりますが、期間や商品をまたいで比較するなら同じルールを適用します。購入金額の意味が異なるデータを混ぜると、順位に影響するため注意しましょう。
分析用データには、顧客ID、注文を特定する番号、購入日、購入金額を用意します。注文単位のデータが複数行に分かれている場合は、顧客ごとに購入金額を合算できる形に整えます。欠損値、重複注文、異常な金額がないかも確認し、処理した内容を記録しておくと、再集計や関係者への説明がしやすくなります。顧客データを扱う際は、利用目的や社内ルールに沿ってアクセス権を管理し、分析に不要な個人情報をむやみに共有しないことも欠かせません。
Excelでデシル分析を作成する手順
Excelでは、顧客ごとの購入金額を集計し、降順に並べて10区分に分けることでデシル分析を行えます。ピボットテーブルは、一覧データを顧客などの項目別に集計するExcelの機能です。関数や専用の分析ツールを使わなくても基本の集計を進められます。以下の手順を使う際は、元データを直接加工せず、複製したシートで作業するのがおすすめです。元データを残しておくと、入力ミスの確認や条件変更に対応しやすくなります。
顧客ごとの購入金額を集計する
最初に、顧客ID、注文番号、購入日、購入金額がそろった一覧を準備します。見出し行を付け、途中に空白行や結合セルを入れないようにすると、並べ替えやピボットテーブルの作成が安定します。設定した対象期間以外の取引が含まれている場合は、購入日で抽出してから集計します。返品やキャンセルの処理、顧客IDが空欄の行の扱いも、この段階で決めたルールに従って整理してください。
一覧の範囲を選び、Excelの「挿入」からピボットテーブルを作成します。フィールドの「行」に顧客ID、「値」に購入金額を設定し、購入金額の集計方法が合計になっているか確かめます。値が個数として集計されている場合は、金額の合計に変更します。これで顧客ごとの対象期間の購入金額がまとまります。集計結果に空欄や想定外の顧客がないか、元データの件数とも照らし合わせて確認しましょう。
集計した購入金額を大きい順に並べ替えます。同額の顧客が複数いる場合は、顧客IDなどを補助的な順序に使えますが、同額の人を異なるデシルに分けるかどうかは、分析目的に応じて扱いを決めます。上位と下位の顧客を機械的に区切るより、境界に同額者がいることを注記する方法もあります。ランキングの作成後は、顧客単位で一人一行になっていることを確認します。注文単位のまま分割されていると、同じ顧客が複数グループに入るおそれがあります。
順位を10グループに分ける
顧客数を確認し、購入金額の高い順にデシル1からデシル10までの番号を割り当てます。顧客数が10で割り切れる場合は、各グループの人数を同数にできます。たとえば顧客数を10で割った商を目安に、上位から順に区切ります。人数が割り切れない場合は、各グループの人数差ができるだけ小さくなるよう調整します。端数をどこに配分したかは、後から再現できるように明記します。
ランク付けは、Excelの行番号を基に行う方法のほか、顧客数と順位を用いた計算式で行う方法があります。たとえば、順位を顧客総数で割った値を使えば、上位からどの区分に属するかを判定できます。ただし、式を使う場合は、顧客数が少ないときや境界の順位で意図しない分類になっていないかを検算します。データを追加した後に順位やグループが自動更新される設定かどうかも確認し、固定値と計算値を混同しないようにします。
分類後は、デシルごとに顧客数、購入金額合計、売上構成比をまとめた表を作ります。購入金額合計は、ランクを条件に合計するSUMIF関数やピボットテーブルを使うと集計できます。売上構成比は、各デシルの購入金額合計を全体の購入金額合計で割って算出します。顧客一人あたりの購入金額を確認する場合は、グループの購入金額合計を顧客数で割ります。比率の合計が全体と一致すること、顧客数の合計が分析対象の顧客数と一致することを確認してください。
表とグラフで結果を確認する
集計表には、デシルごとの顧客数、購入金額合計、売上構成比を並べます。必要に応じて、顧客一人あたりの平均購入金額や、前回分析からの変化も加えます。ただし指標を増やしすぎると、何を見ればよいか分かりにくくなるため、分析の目的に必要な項目に絞ります。列名には金額の単位や対象期間を付け、表だけが共有された場合でも数値の意味を取り違えないようにします。
グラフにするなら、デシル別の購入金額合計を棒、売上構成比の累積値を折れ線で示す複合グラフが一案です。棒グラフで各グループの金額差を、折れ線で上位から順に足し上げた売上比率を確認できます。構成比と累積構成比は別の指標なので、凡例や軸の名称を分かりやすく記載します。グラフの見た目だけで結論を急がず、元の表に戻って金額や人数も併せて確かめましょう。
Excelで作成した表やグラフには、対象期間、対象顧客、購入金額の定義、集計日を添えて保存します。次回の分析で条件を変えた場合は、前回と同じ基準の比較なのか、異なる条件での参考値なのかを明確にします。データを更新する場合は、ピボットテーブルの更新漏れにも注意が必要です。作業者以外の人が見ても集計の前提や計算方法を追える状態にしておけば、施策の判断や引き継ぎにも活用しやすくなります。
結果を読むときに確認したい指標と解釈
デシル分析の表を見るときは、まず各グループの購入金額合計と売上構成比を確認します。上位のデシルほど構成比が大きいか、上位から累積したときに売上の多くを占める範囲がどこまでかを見ます。特定の少数グループに売上が集中しているなら、上位顧客との関係維持が重要な課題になり得ます。ただし、構成比が高いという事実だけでは、顧客の購入理由や今後の継続性までは判断できません。
次に、顧客数と購入金額を組み合わせて読みます。顧客数が同じでも、購入金額合計の差が大きい場合は、上位層の一人あたり購入金額が高いことが考えられます。平均購入金額はグループの全体傾向を把握するのに役立ちますが、一人の大口購入者によって平均が引き上げられることもあります。中央値は金額を小さい順に並べたとき中央に位置する値であり、平均だけでは見えにくい分布の偏りを確かめる補助になります。
構成比の累積値は、上位からどの範囲の顧客で全体売上の何割を占めるかを見るために使えます。施策の対象範囲を検討する際には、どこか一つの境界を自動的に正解とみなすのではなく、施策費用や対象者数、想定する顧客体験と照らし合わせます。上位層に配信対象を絞ると費用を抑えやすい一方、境界の外にいる顧客への機会を失う可能性があります。複数の候補範囲を比較して判断してください。
分析結果は、顧客属性、購入商品、チャネル、購入日などと組み合わせると、次に調べるべきことが見つかります。たとえば上位層に特定の商品が多いなら、その商品を買う顧客の共通点を確認できます。季節商品や高額商品の購入が上位ランクに影響している場合は、通常の購買行動とは分けて考える必要があります。集計で分かったことと、そこから推測したこと、追加確認が必要なことを分けて記録すると、根拠の範囲を越えた解釈を避けられます。
デシル別の顧客に合わせて施策を設計する
デシル分析の結果は、顧客グループごとに異なる施策を検討する材料になります。上位顧客には、購入後のサポートや先行案内、継続利用に役立つ情報など、関係を保つ取り組みが候補です。割引を提供すれば購入が増えると決めつけず、値引きがなくても選ばれている理由や、顧客が期待する価値を考えます。上位層への過剰な販促が利益を圧迫したり、顧客にとって不要な連絡になったりしないよう、接触内容と頻度も検討します。
中位の顧客層は、購入を続けることで上位に移る可能性がある一方、購入金額が伸びない理由を確認したい層でもあります。購入間隔が長いのか、特定の商品だけを利用しているのか、必要な情報が届いていないのかによって、適切な対応は異なります。関連商品の案内や使い方の情報提供などを行う場合も、実際の購入履歴に関連しているかを確かめましょう。上位層と同じ特典を一律に適用するより、顧客が次に必要とする情報を届ける視点が大切です。
下位の顧客層には、購入経験が少ない人、購入金額の小さい人、購入から時間が経った人が混在している可能性があります。購入金額だけを理由に「関心が低い」と判断せず、直近の購入日や購入回数を確認します。初回購入者には商品理解や利用開始を助ける案内が適する場合があり、以前購入した人には再購入のきっかけが必要かもしれません。対象者をさらに分けられない場合は、小さな範囲で施策を試し、反応を確認してから対象を広げる方法もあります。
施策を実施したら、売上だけでなく、施策の目的に応じた指標を確認します。再購入を目指すなら再購入率や購入までの期間、顧客との関係維持なら配信停止や問い合わせの状況も参考になります。比較するときは、施策を実施したグループと実施しなかったグループで、対象条件や観察期間をできるだけそろえます。値引きによる売上増が利益の増加につながったかも確認し、次の施策に反映させます。デシル分析は施策を決める出発点であり、実施後の評価と更新まで含めて活用します。
メリットと限界を理解して使う
デシル分析のメリットは、購入金額という分かりやすい指標を使い、顧客全体の売上構成を把握できることです。必要なデータがそろっていれば、表計算ソフトでも比較的取り組みやすく、分析に慣れていない担当者も結果を共有しやすいでしょう。複雑なモデルを作る前に、顧客の購入金額にどのような偏りがあるかを確認できます。定期的に同じ条件で集計すれば、顧客構成や売上分布の変化を追う基礎資料にもなります。
結果の読み方が直感的で、グループごとの施策を考える会話につなげやすい点も利点です。顧客全体への一斉配信だけでなく、購入状況に合わせて案内を変える案を検討できます。また、データの準備や計算の仕方が比較的単純なので、対象期間や商品範囲を変えた複数の集計を試し、結果がどう変わるかを確認することもできます。分析を小さく始めたいときや、より細かな分析に進む前に現状を整理したいときに向いています。
一方、購入金額しか見ないため、購入回数や直近の購入時期、利益率、顧客のニーズは直接分かりません。一度だけ高額商品を買った人が上位に入ることもあれば、少額の商品を継続して購入する顧客が中位や下位に入ることもあります。売上への貢献が高く見えても、値引きや配送などにかかるコストを含めると利益への貢献は異なる可能性があります。売上だけで顧客の価値を断定せず、必要な指標を補うことが重要です。
もう一つの限界は、顧客を10等分するため、購入金額に大きな差がある顧客同士でも同じグループに入る点です。グループの境界付近では、わずかな金額の違いで別ランクになる場合もあります。顧客数が少ないと各グループの人数も少なく、購入一件の影響が大きくなります。分析結果を過度に細かく解釈せず、顧客数や金額のばらつき、境界の状況を確かめてください。必要に応じて期間別の比較や他の分析方法を組み合わせます。
RFM分析・ABC分析との違いと使い分け
デシル分析と似た目的で使われる顧客分析に、RFM分析があります。RFM分析は、最終購入日(Recency)、購入頻度(Frequency)、購入金額(Monetary)の三つの指標で顧客を分類する方法です。購入金額に加えて、最近購入したか、繰り返し購入しているかを確認できるため、過去の高額購入だけでは捉えにくい顧客の状態を見やすくなります。一方で、分類条件の設計やグループの解釈はデシル分析より複雑になります。
RFM分析と組み合わせる場面
デシル分析で上位に入った顧客の中に、最近購入していない人がどれほどいるかを知りたい場合は、RFM分析が役立ちます。購入金額が高くても、購入から長い期間が空いている顧客には、継続的に購入している人とは違う対応が必要かもしれません。反対に購入金額が現在は小さくても、直近に購入し頻度が上がっている顧客は、成長の兆しを持つ可能性があります。購入金額だけでは見落とす顧客の動きを、時間や頻度の軸で補う考え方です。
RFM分析では、各指標をいくつかの段階に分け、その組み合わせから顧客グループを作ります。指標を細かく設定しすぎるとグループ数が増え、それぞれに異なる施策を用意する負担が大きくなります。分析する前に、どの状態の顧客を見分けたいのかを決め、実務で対応可能な数に分類を抑えることが大切です。デシル分析の結果を入口にして、上位層や特定の課題がある層だけをRFM分析で詳しく見る方法もあります。
両者はどちらか一方を常に選ぶものではありません。短時間で売上の分布を知りたいときはデシル分析、購入時期や頻度も踏まえて顧客の状態を分けたいときはRFM分析が候補になります。分析に必要なデータがそろっているか、結果を受けて実施できる施策があるかも選定の基準です。細かな分類を作ること自体を目的にせず、意思決定に必要な情報を得られる範囲で使い分けましょう。
ABC分析との違いを押さえる
ABC分析は、売上や利益、販売数量などの指標をもとに対象を重要度別のグループに分ける方法です。デシル分析が顧客を人数のほぼ等しい10グループに分けるのに対し、ABC分析では累積売上の割合などを基準に、A・B・Cの区分を設定します。そのため、各グループに入る人数や商品数は均等とは限りません。顧客だけでなく商品や在庫を分析対象にすることもあり、用途の幅が異なります。
顧客の購入金額を大まかに重要度別で捉えたい場合には、ABC分析が見やすいことがあります。商品管理で販売金額や出荷量を基準に重点商品を決める場合にも使われます。一方、顧客数を10等分したうえで層ごとの違いを細かく比べたいなら、デシル分析が選択肢になります。分類の基準が異なるため、両方の結果を比べる場合は、区分の意味と対象指標を混同しないようにしてください。
分析手法の選択では、名前や分類数だけでなく、何を明らかにしたいかを基準にします。顧客の購入金額の分布を均等な人数単位で確認するのか、累積売上に基づいて重点対象を決めるのか、商品管理の優先順位を付けるのかで適した方法は変わります。どの方法でも、分類後に何を判断し、誰がどの施策を行うのかまで考えることが大切です。必要であればデシル分析を概況把握に使い、別の分析で具体的な判断材料を補います。
実務で起こりやすい失敗と、分析の質を保つ工夫
よくある失敗の一つは、対象期間を決めずに過去の購入履歴をすべて合算することです。長期間のデータでは、以前に高額購入したものの現在は利用していない顧客が上位に残ることがあります。反対に期間を短くしすぎると、購入頻度の低い商品や季節性のある商品で、たまたま購入がなかった顧客が下位に寄ることもあります。目的に応じて期間を設定し、異なる期間で結果がどう変わるかも必要に応じて確認します。
顧客IDの重複や未統合も、結果を歪める原因になります。同じ人が複数の会員番号を持っていると購入金額が分散し、本来より下位に分類されることがあります。また、家族で一つのIDを共有する場合は、個人ではなく世帯に近い単位の分析になるかもしれません。IDの単位が分析目的に合っているかを確認し、統合できないデータが残る場合は、その影響を明記します。集計値が想定より大きく違うときは、まずデータの重複と欠損を調べましょう。
分類結果を見て、上位デシルをそのまま「優良顧客」と決めつけることも避けたい誤りです。デシル分析が示すのは設定期間内の購入金額であり、利益、満足度、継続意向、将来の購入可能性を直接表すものではありません。高額購入が返品や特別な一回限りの事情による場合もあります。上位層の購入内容や購入頻度、直近の利用状況を確かめ、顧客にとって望ましい施策かどうかも合わせて検討してください。
分析して終わり、施策後の確認をしない状態も成果につながりにくい原因です。施策の目的、対象グループ、実施期間、評価する指標を事前に決め、実施後に結果を比較できるようにします。売上が増えても、値引きによる利益減や他の顧客からの購入移行が起きていないかを確認する必要があります。次回の集計では同じ定義を使い、条件を変えた場合はその変更点を記録します。継続して比較できる管理方法を整えると、分析が単発の資料で終わりません。
デシル分析に関するよくある疑問
「顧客数が10で割り切れない場合はどうすればよいか」という疑問には、各グループの人数差を小さくするように配分するのが基本的な考え方です。端数を上位側に寄せるか、下位側に寄せるかは、分析の目的と運用ルールに合わせて決めます。重要なのは、担当者が変わっても同じ条件で再現できるように、配分方法を記録することです。グループ人数が一部だけ大きく異なる場合は、比較時に人数差の影響も考慮します。
「購入履歴がない顧客も含めるべきか」は、何を見たいかによって異なります。購入者の中で売上構成を比べたいなら、対象期間内に購入した顧客を分析対象にする方法があります。会員全体のうち購入に至っていない層も把握したいなら、購入金額ゼロの顧客を含める選択肢があります。ただしゼロ円の顧客を含めると、下位グループの意味が変わります。分析結果には対象者の条件を示し、異なる条件の集計を同列に比較しないようにしましょう。
「Excel以外でも実施できるか」という点では、データベース、BIツール、プログラミング環境などでも同じ考え方で集計できます。顧客ごとに購入金額を合算し、降順に並べ、順位に基づいて10区分を作るという基本は変わりません。分析の頻度が低くデータ量も扱いやすいなら表計算ソフトで十分な場合があります。大量データを繰り返し更新したり、複数部署で共有したりする場合は、自動化や権限管理を含めて運用環境を検討します。
「上位の顧客だけに施策を行えばよいか」という問いに対しては、デシル分析だけで決めないことが重要です。上位顧客の維持が必要な場合もあれば、中位層の継続購入を促すことが事業課題になる場合もあります。下位層にも新規顧客や購入機会の少ない顧客が含まれ、今後の利用につながる可能性があります。施策の対象は、購入金額の順位だけでなく、事業の目的、顧客の状況、施策費用、顧客体験を踏まえて決めてください。
まとめ
デシル分析とは、顧客ごとの購入金額を集計し、高い順に人数がほぼ均等な10グループへ分けて、グループ別の売上構成を調べる方法です。顧客数、購入金額合計、売上構成比などを比較すれば、対象期間の売上がどの層に支えられているかを把握できます。購入金額という一つの指標で始められるため、顧客分析の基本を身につけたい場合や、全体の分布を手早く確認したい場合に活用できます。
実施前には、対象期間、対象顧客、顧客ID、購入金額の定義をそろえます。Excelでは顧客ごとに購入金額を集計し、降順に並べて10区分を割り当てた後、グループごとの合計と構成比を算出します。顧客数や売上比率の合計を検算し、表やグラフには集計条件を明記してください。期間や定義が不明確な結果は、前回との比較や施策の判断に使いにくくなります。
デシル分析だけでは、購入頻度や直近の購入時期、利益、顧客のニーズまでは分かりません。上位に分類された顧客が継続顧客とは限らず、下位の顧客にも今後購入する可能性があります。必要に応じてRFM分析や商品分析などを組み合わせ、顧客の状態を補足しましょう。分類を結論として扱うのではなく、追加で確認すべきことを見つける手がかりとして使う姿勢が大切です。
分析の価値は、結果を施策に結び付け、実施後の変化を確かめて次の判断に活かすことで生まれます。どの層に何を届けるのか、何を成果として測るのかを先に決め、費用や顧客への影響も含めて評価してください。同じ条件で定期的に集計すれば、顧客構成の変化を追う基礎にもなります。まずは扱いやすい範囲のデータから始め、前提を記録しながら、必要な分析へ段階的に広げていきましょう。
グロービス式と呼びたくなる、強制力の強いアウトプットの機会・グループワークがあることでモチベーションを持続させ走り抜けた感覚です。
データ分析の基本をまなぶことで、普段聞いていて点だった単語や考え方が線で繋がりました。
ビジネスパーソンの教養として、挑戦してよかったです。