- 経常利益:企業持続の指標
- 本業と財務のバランス重視
- 多角的視点で成長分析
本記事では、企業の経営状況を把握する上で欠かせない指標である「経常利益」について、計算方法や、営業利益、純利益との違い、さらには注意すべきポイントを詳しく解説する。20代の若手ビジネスマンに向け、専門的な知識を平易な言葉で整理し、経営分析に役立つ情報を提供することを目的としている。
経常利益は、企業が通常の事業活動において継続的に得られる利益として評価され、企業の実質的な収益力を正確に反映する指標である。本記事では、経常利益の意義やその算出方法、他の利益指標との比較について詳述し、事業分析や経営判断における利用方法を理解する一助となる情報を掲載する。
経常利益とは
経常利益とは、企業が本業である営業活動から得られる営業利益に加え、財務活動など本業以外の収益や費用を加減することにより算出される利益である。
具体的には、損益計算書に記載される利益項目のうち、本業による営業利益に、預金や債券投資などから得られる営業外収益を加算し、借入金の支払利息や為替差損などの営業外費用を差し引いた数値となる。
この計算式は以下のように表される。
経常利益 = 営業利益 + (営業外収益 − 営業外費用)
ここで、重要な点は「経常」という名称に示される通り、一時的な特別損益や臨時的な利益は含まれておらず、通常の持続的な企業活動によって生み出される収益だけを反映していることである。
この性質により、経常利益は企業の実態を把握する指標として、投資家や金融機関、さらには経営陣にとっても非常に有用なデータとなる。企業の財務活動や投資戦略がどの程度収益に貢献しているか、または収益力にどのような影響を及ぼしているかを検証する際に、経常利益は重要な位置を占める。
経常利益の計算においては、まず本業の収益力を示す営業利益が基礎となる。
営業利益は、売上高から売上原価、さらに販売費や一般管理費といった経費を差し引いて算出される数値であり、企業のコアビジネスの健康状態を反映している。
そこに対し、営業外収益としては、受取利息、配当金、為替差益、不動産賃貸収入など、企業の通常の事業以外で発生する収益が含まれる。
一方、営業外費用には、借入金利息、社債利息、為替差損など、主に財務活動に起因する費用が計上される。
このように、経常利益は企業活動全体の「継続的な」収益力を示すため、一時的な要因による影響を極力排除し、企業の持続可能な経済活動の実態を浮き彫りにするのに役立つ。
また、経常利益は企業ごとのビジネスモデルや財務構造の違いを理解する上でも重要な指標である。
例えば、本業の収益力が大きい企業では営業利益と経常利益との差は小さくなるが、反対に資産運用や借入金による費用が大きい場合、営業利益に対して経常利益が大きく変動することがある。
このため、経常利益を通じて、企業が本業でどれほど利益を上げているか、または財務活動が経営にどのような影響を及ぼしているのかが一目瞭然となる。
さらに、同業他社との比較や過去数年の推移を分析することで、企業の成長性や安定性、さらには潜在するリスクを評価する指標としても活用が可能である。
経営判断や投資判断においては、売上総利益や営業利益、さらには最終的な純利益との関連性がしばしば議論される。
売上総利益(粗利益)は、売上高から売上原価を差し引いた基本的な収益力を示すが、販管費などを考慮していないため、企業の全体的な収益性を十分に把握することは難しい。
一方、純利益は、経常利益からさらに特別損益や税金などの要素を反映し、企業に実際に残る利益を示すため、株主への配当原資など実務的な側面で重要視される。
このような複数の利益指標を総合的に分析することで、企業の経営状況や財務の健全性、及び将来の収益見通しを正確に評価することができる。
経常利益の注意点
経常利益を利用して企業の経営状態を分析する際には、いくつかの注意点が存在する。
第一に、経常利益には本業以外の財務活動に起因する収益や費用が含まれているため、企業が実際にどれほどの収益を本業から生み出しているのかを正確に反映しているとは限らない。
例えば、営業利益が低迷している場合でも、資産運用による営業外収益が大きいと経常利益がプラスとなるケースがある。
このため、経営陣やアナリストは経常利益だけでなく、営業利益や純利益との比較を通じて、本業と財務活動のバランスを慎重に考慮する必要がある。
第二に、経常利益は単年度の結果を示しているに過ぎないため、短期的な要因に左右されやすいという特性がある。
一時的な収支の変動や、特定年度における市場環境の影響などが経常利益に及ぼす影響は少なくない。
そのため、企業の経常利益を評価する際には、過去数年分の推移や業界平均との比較が不可欠となる。
これにより、単一年度の数値だけでは見落としがちな長期的な収益傾向や経営の安定性を正しく判断することが可能となる。
さらに、経常利益の計算においては、会計処理のルールや基準の変更、さらには企業ごとの会計方針の違いが数値に影響を与える可能性がある点にも注意が必要である。
例えば、ある企業では営業外収益や営業外費用の項目において、計上方法や認識のタイミングが異なる場合があり、同業他社との直接比較が難しくなることもある。
そのため、複数の指標を組み合わせた多角的な分析が、より正確な経営状況の評価には求められる。
また、経常利益の数値が高いからといって必ずしも経営が好調であるとは限らない。
本業での収益力が十分でないにもかかわらず、一時的な要素や非継続的な収益が経常利益を押し上げている可能性も否定できない。
そのため、企業分析においては、経常利益とその他の利益指標との整合性や、企業固有の事情、市場環境なども踏まえたうえで総合的な判断を下すことが重要となる。
まとめ
本記事では、「経常利益」という指標について、その定義、計算方法、さらには営業利益や純利益との違いを中心に詳しく解説してきた。
経常利益は、企業が通常の事業活動および財務活動全体から得る継続的な収益力を示す重要な指標であり、企業の経営状態を正確に評価するためには欠かせない手法である。
しかしながら、経常利益には本業以外の要素が加味される点や、単年度の数値であるため、短期的な変動や会計処理上の違いが影響する可能性があることに留意する必要がある。
そのため、経営判断に際しては、営業利益や純利益、売上総利益など複数の利益指標と照合しながら、長期的な推移や同業他社との比較を通じた総合的な分析が求められる。
また、最新の会計基準や市場環境の変化にも目を向け、柔軟かつ正確な経営分析を実施することで、将来的なリスクを低減し、企業の健全な成長を維持するための戦略策定につなげることができる。
これらの分析手法は、20代の若手ビジネスマンにとって、経営数字の読み方や企業分析の基礎を理解する上で非常に有用な知識となるだろう。
今後のキャリアにおいて、財務指標を活用した客観的な経営評価のスキルを身につけることは、企業内での信頼性向上や意思決定の質の向上に大いに寄与する。
最終的には、経常利益を中心とした各種経営指標の理解とその応用が、持続可能なビジネスの成立と発展に直結する重要な要素であることを再認識していただきたい。