- 付加価値活動の把握と無駄排除が大切
- 部門間調整と改善継続が重要
- 戦略的運営で競争力向上を目指す
本記事では、現代の激しい市場競争に対応するための経営手法として注目されている「ABM(活動基準管理)」と「ABB(活動基準予算管理)」について、20代の若手ビジネスマンを対象に、基礎概念から実際の運用方法、そしてその導入過程で留意すべき点まで、専門性と実践的視点をもって解説する。
経営環境が急速に変化する現代において、従来の原価計算手法であるABC(活動基準原価計算)を発展させたこれらの手法は、企業のグローバル競争力向上や経営効率化を実現するために非常に有用なツールとして位置付けられている。
本記事は、ABMとABBの概念、具体的な活用事例、実装に伴う課題および企業活動全般に与える影響について、体系的かつ具体的に述べることを目的としている。
ABM(活動基準管理)とは
ABM(活動基準管理)とは、ABC(活動基準原価計算)の考え方を単なる原価計算に留めず、企業の活動の中で生み出される付加価値に注目する経営管理手法である。
従来のABCでは、間接費を正確に把握するための手間はかかるものの、現実のコスト構造を分析するための基盤となっており、その応用としてABMは企業全体の業務プロセスにおける「付加価値活動」と「非付加価値活動」に分類する考え方を採用している。
具体的には、生産現場や物流、事務処理などあらゆる部門において、どの業務が実際に企業価値の向上に寄与しているのか、また逆に効率改善の余地がある非付加価値活動について明確に把握し、無駄な工程や冗長な作業の削減を図る。
例えば、自動車部品製造会社における具体例では、従来のABCにより製品ごとの正確な原価が算出され、従来想定されていた原価との差異が明らかになった。その上で、製品Bの工程において、取扱説明書の添付作業や箱詰め作業といった非付加価値活動を徹底的に見直し、無駄を排除することにより、コスト削減と同時に競争力の向上を実現している。
また、ABMの重要な特徴として、単一製品に留まらず、企業全体の活動を体系的に管理する点が挙げられる。
生産現場のみならず、配送業務や顧客サービスなど各部門で生じる無駄なプロセスの洗い出しと改善を、経営戦略の一環として推進することで、全社的な競争力向上を目指すのである。
このように、ABMは単なるコスト集計ではなく、企業活動における全体最適を促進するための戦略的手法として、現代の企業経営において必須のアプローチとなりつつある。
ABB(活動基準予算管理)の注意点
ABB(活動基準予算管理)は、ABMのアプローチをさらに発展させ、予算策定の時点から活動に着目して計画を立て、PDCAサイクルを回すための手法である。
ABBでは、既存のABMで識別された付加価値および非付加価値活動の分析結果を踏まえて、予算計画に反映することで、資源の最適配分と業績管理の精度を向上させる狙いがある。
しかしながら、ABBの導入にあたってはいくつかの注意点が存在する。
第一に、ABBの実装は、企業内の各部門や関係者間での意見調整や意思統一が必要となるため、従来の予算策定プロセスよりも手間がかかる。
各活動の評価や分析を行うために、担当部門ごとに細かなデータ収集や現状把握が求められ、これが全社的な導入のハードルとなるケースが頻繁に発生する。
第二に、ABBは活動の成果に基づいた予算管理を行うため、実際の活動レベルが予算達成の指標となる。
そのため、企業内の技術力の低下や現場の気の緩みといった要因がある場合、活動の改善策が十分に実行されず、予算未達成へとつながるリスクがある。
また、ABBは従来の数値目標のみならず、各活動の質や効率といった無形の要素も評価対象とするため、定量的な数値で表しにくい点をどう測定するかという、管理会計上の難題にも直面する。
さらに、ABBの効果を継続的に維持するためには、定期的なフィードバックと改善プロセスが不可欠であり、一度導入して終わりではなく、継続的な改善活動が求められる。
このような背景から、ABBの導入は経営層だけでなく、現場のオペレーションレベルにおける協力体制の構築が必須であり、全社的な取り組みとして実施されなければ、期待する効果を発揮することは難しい。
結果として、ABBの導入と運用には、戦略的な視点と細部にわたる分析が求められ、全社的な意識改革および組織内の連携が不可欠であるといえる。
まとめ
本記事では、ABM(活動基準管理)とABB(活動基準予算管理)の概念およびそれぞれの運用上の注意点について詳述してきた。
まず、ABMは企業における全活動を付加価値活動と非付加価値活動に分類し、無駄の徹底的な排除を図る手法であり、ABC(活動基準原価計算)を基盤として企業全体の効率化に寄与するものである。
具体例として、自動車部品製造会社における原価計算の精度向上と、非付加価値活動の削減により、競争力の維持と向上が実現された事例を紹介したが、これは企業全体の戦略的な視点に立った活動改善の重要性を示している。
次に、ABBはABMで得られた分析結果を予算管理に取り入れることで、計画の段階から効率的な資源配分と継続的なPDCAサイクルの運用を可能にする手法である。
しかしながら、ABBの実装には、部門間の調整、定量化が難しい評価項目の設定、そして継続的な改善活動が必要とされるため、導入のハードルは決して低くない。
いずれの手法も、現代のグローバル競争環境においては、持続的な経営の効率化と競争優位性の確立に資する重要な経営ツールとして位置づけられている。
20代の若手ビジネスマンにとっては、これらの手法の基本概念を理解し、自社や自身が関わるプロジェクトに応用することで、より戦略的な経営判断や業務改善の手法を習得することが、将来的なキャリアアップおよび組織全体のパフォーマンス向上に直結すると考えられる。
今後の経営環境の変動に対応するためにも、ABMとABBの両手法の理解と適切な運用は不可欠であり、日々の業務プロセスにおける具体的な改善策として、ぜひその実践を検討すべきである。
最終的には、コスト削減と業務効率化を通じた企業価値の向上を目指し、全社的な取り組みとしてこれらの手法を導入することが、長期的な競争力の強化に繋がるであろう。
自分のペースで学べること、実践につながる内容でとても良かったです。
今後、他の講座もチャレンジしたいです。