- 主体的意見交換の重要性
- 批判・関与で組織活性
- 信頼共感による成長基盤
近年、企業経営においてリーダーシップのみならず、部下やチームメンバーの積極的な姿勢―すなわち「フォロワーシップ」―が組織の成長や業績向上に与える影響が大きく注目されています。2025年のビジネスシーンでは、従来のトップダウン型のリーダーシップだけでなく、各社員が自らの役割において批判的思考と積極的関与を発揮することで、組織全体の柔軟性と生産性が向上することが期待されています。
フォロワーシップは、ただ単にリーダーの指示に従うのではなく、主体的に意見を交わし、建設的な批判や代替案を提示できる能力を意味します。これにより、環境の変化や不確実な時代背景においても、組織が自律的かつ迅速に対応できる仕組みが構築され、結果として企業全体の競争力が強化されるのです。
フォロワーシップとは
フォロワーシップとは、組織やチームのリーダーの指導のもとで働く社員が、単に受動的に命令を実行するだけではなく、主体的に考え行動し、組織全体の成果向上に貢献する姿勢のことを指します。
米国のカーネギーメロン大学のロバート・ケリー教授が1992年に提唱した「The Power of Followership」によれば、フォロワーシップはリーダーシップと並ぶ組織成功の重要要素であり、現代のビジネス環境においてはその意義が再認識されています。
具体的には、リーダーが示す方針や戦略に対して建設的な意見や提言を行う、または疑問を呈することで健全な議論を促すといった行動が求められます。こうした行動は、業務プロセスの中でコンプライアンスの維持や意思決定の質を向上させるとともに、組織全体における信頼関係や協働意識を育む役割を担います。
また、フォロワーシップは単なるメンバーシップ(いずれの役割も果たすという考え方)やリーダーシップ(組織にポジティブな影響力を与える)の補完的要素として捉えられ、双方のバランスが取れて初めて組織の真の成長が実現されるとされています。
さらに、フォロワーシップには批判的思考と積極的関与という二つの軸が存在し、これらに基づいてフォロワーは大きく5つのタイプ―模範的フォロワー、孤立型フォロワー、順応型フォロワー、消極的フォロワー、および実務型フォロワー―に分類されます。
模範的フォロワーは、批判的思考と積極的関与の両面が高く、リーダーの右腕として最も理想的な存在です。一方、孤立型フォロワーは批判的思考は高いものの、チームとしての協働には消極的であることが多く、また順応型フォロワーはリーダーの指示に盲目的に従い、自発的な意見を持たない傾向が指摘されます。
このように、フォロワーシップは単一の概念ではなく、組織内の個々人がどのような姿勢で業務に臨むかという多様な要素が内包されており、現代のVUCA(Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguity)の時代においては、いかに社員自らが自分の役割を再定義し、主体的に問題解決に取り組むかが重要なカギとなるのです。
また、リモートワークの普及やデジタル化の進展によって、直接的なマネジメントの時間が削減される中でも、フォロワーシップを発揮する社員によってチーム内での情報共有や意思決定が円滑に行われるなど、組織全体のアジリティ向上に寄与する点も見逃せません。
フォロワーシップの注意点
フォロワーシップを組織で発揮する際には、いくつかの注意点が存在します。まず、フォロワーシップにおける「批判的思考」は、単にリーダーの指示を否定するものではなく、あくまで建設的な意見交換を通して組織全体の改善を目指すものである必要があります。
そのため、リーダーは部下からの提言を率直に受け入れ、意見が対立する場合でも冷静な議論を推進する姿勢を持つことが求められます。上司と部下間の信頼関係が薄い状況では、建設的な批評が却ってコミュニケーションの障壁となる可能性があるため、心理的安全性の確保が不可欠です。
また、積極的関与についても注意が必要です。業務において主体的に動くことは評価される一方で、形だけの積極性や無批判な賛同は、組織の問題点を見逃す原因ともなりかねません。適切なバランスが求められ、すなわち、自分自身の意見を明確に持ちながらも、リーダーの判断や方針に盲目的に従わない態度が理想とされています。
さらに、フォロワーシップを育成するためには、定期的な研修やロールプレイングを実施するなど、具体的なスキルの向上をサポートする取り組みが効果的です。実際にリーダーの業務を体験するプログラムや、クリティカルシンキングを養うための専門講座などを通じ、社員一人ひとりが自らの役割を再認識し、適切な判断を下せる環境を整備することが重要です。
また、管理職自身もフォロワーシップの育成に対して責任を持ち、個々の社員が自律的に行動できるように業務量を適切に調整し、特定の社員に負担が集中しない体制を構築することが求められます。人手不足が叫ばれる現代の企業環境において、プレイングマネジャーが孤立せずに部下をサポートできる仕組み作りは、組織の持続可能な成長に直結する要素です。
さらに、フォロワーシップの醸成には、企業文化や価値観の共有も大きな役割を果たします。各社員が自分自身のキャリアパスや成長ビジョンを明確に描き、そのビジョンに沿った行動が推奨される環境でこそ、フォロワーシップは本来の意味を発揮することができるのです。
このように、フォロワーシップを推進する際は、個々の社員が自分なりの意見を持ち、かつリーダーと協力しながら問題解決に取り組む体制が不可欠です。批判的思考と積極的関与のバランスをどのように醸成するかが、組織全体の継続的な発展に大きく影響するポイントであるため、経営層や管理職はその点について十分な理解と対策を講じる必要があります。
まとめ
本記事では、フォロワーシップの概念とその意義、さらには5つのタイプに分類される各フォロワーの特徴について解説してきました。現代の変動性が高いビジネス環境において、従来のリーダーシップだけでは対応が困難な局面が増加しており、各社員が主体的に意見を交わしながら組織の成長に貢献するフォロワーシップの重要性が増しています。
企業が持続可能な成長を遂げるためには、単にリーダーを中心とした意思決定だけではなく、部下やチームメンバーが自らの意見を持ち、建設的な批判と積極的な関与を発揮できる環境の構築が必要不可欠です。
また、フォロワーシップを向上させるためには、研修プログラムやロールプレイング、さらには心理的安全性を保障する企業文化の創出が求められます。これにより、各個人が自律的に問題解決に取り組むとともに、全社的な業績向上につながる組織作りが実現されるでしょう。
今後、20代をはじめとする若手ビジネスマンは、単に上司の指示に従うのではなく、自らの視点で意見を持ち、時にはリーダーシップに対する健全な批判を行うことで、組織全体の柔軟な対応力を高める役割を担うことが期待されます。
このような取り組みは、組織内の信頼関係構築やチームビルディングの向上、さらには全体の生産性向上にも大きく寄与します。最終的には、一人ひとりの成長の積み重ねが企業全体の繁栄へとつながるため、フォロワーシップの醸成は企業戦略の一角として重要視されるべき課題となります。
以上の点を踏まえ、現代のビジネスパーソンは、リーダーシップと並んでフォロワーシップを意識し、自己研鑽とともに組織全体の成長に貢献していくことが求められるでしょう。組織が抱える多様な課題に柔軟に対応し、持続的な成長を実現するためにも、今一度フォロワーシップの本質と育成方法について考え直すことが重要です。
今までは経験に基づいたリーダーシップで自己流になっていた部分が多々ありました。本講座を受講し理論を学ぶことができたことで、今後どのようにリーダーシップを発揮していけば良いのか、目指すべきことが見えました。あとは、現場の中で経験と理論を融合させシナジー効果を発揮できるよう学んだことをアウトプットしていきたいと思えるようになりモチベーションがあがりました。
また、自社の中での自分の立ち位置しか把握できていませんでしたが、色々な業種、職種の方とディスカッションすることができ、視野が広がり、自身を俯瞰して見れるようにもなり、とても刺激的でした。
インプットは習慣化していたつもりですが、アウトプットの習慣化はできていなかったことに気づきました。どちらもできないと効果が薄れてしまうことを認識できたので、今後は、どちらも習慣化していきたいと思います。