- 組織結束も意思低下招く
- 自意識が決断力の肝
- 多角論で弱点を洗い出す
本記事では、近年の企業経営や組織開発において注目される「集団浅慮(グループ・シンク)」について、20代の若手ビジネスマンを主な対象とし、現代の業務環境におけるその影響と対策を専門的かつ実践的な視点から解説する。
急速に変化するビジネス環境の中で、組織が一体となって迅速な意思決定を求められる一方で、個々の判断や多様な視点を軽視するリスクが増大しています。
集団の結束力の高さが一方で組織の成功要因となるのは事実ですが、その反面、「集団浅慮」に陥ると合理的な意思決定が阻害され、結果として好ましくない結論に至る恐れがあるため、若手ビジネスマン自身がそのメカニズム及び回避策を理解しておくことが求められます。
集団浅慮とは
「集団浅慮」とは、一団の人々が合意形成を急ぐあまり、個々のメンバーが持つ独自の意見や批判的な視点が十分に反映されず、結果として質の低い、または非合理的な意思決定が行われる現象を指します。
この概念は、アメリカの社会心理学者アーヴィング・ジャニスにより提唱され、個々の意見が尊重されず、組織やグループ全体の和を重んじるあまり、より広範な視点や反論が排除される状況を象徴しています。
集団浅慮が発生しやすい要因としては、組織内部での過度なまとまり(集団凝縮性)が挙げられます。
具体的には、メンバー間の信頼関係の強さや、新卒中心の若手が多い集団、長期間にわたって離職率が低い場合などがそのリスクを高める要因となります。
また、組織の和や安全性を優先するあまり、異なる意見や批判が排除され、多様な価値観の討論が行われなくなると、結果として固定観念にとらわれた意思決定プロセスが固定化される危険性が高まります。
集団浅慮のメカニズムは、組織内部の同調圧力に起因するものです。
議論の過程で多数派の意見に無批判に従う状況では、本来ならば分散していたリスク認識や新たな視点が、結果として無視されることとなります。
例えば、企業の重要な戦略決定を行う会議において、全員が賛同する環境が整っていると、少数意見が出にくくなり、その結果としてリスクや変化に対する洞察が欠如する可能性があります。
そのため、集団浅慮は良好な組織文化や高い愛社精神といったポジティブな側面と、同時に重大なリスクを孕む二面性を持っています。
さらに、現代の組織運営においては、デジタル化の進展やリモートワークの普及に伴い、物理的な距離を超えたコミュニケーションが進んでいるため、従来の意味での「結束感」が薄れる一方で、オンライン上での情報共有や同調圧力の新たな形態が生じる可能性があります。
このような環境下においては、意思決定プロセスの透明性や、意見の多様性をあえて促進する仕組み作りが不可欠となります。
集団浅慮の注意点
集団浅慮に陥るリスクは、一見組織内の和を維持し、迅速な意思決定を促す効果があるかのように感じられますが、実際には重要な意思決定プロセスにおいて大きな落とし穴となり得ます。
まず、集団浅慮の状況下では、各メンバーが個々の専門知識や経験に基づいた判断を十分に発揮できなくなるため、最終的な決定が表面的な合意に終始し、実行可能性やリスク管理に乏しいものとなる恐れがあります。
これにより、後日、選択した方針に対する深刻な問題が発覚し、組織全体の信用や業績に悪影響を及ぼすケースが少なくありません。
また、集団浅慮は、経営陣やリーダー層が一方的な考えに固執してしまう場合にも発生しやすいという特徴があります。
リーダーシップが強く、組織内でリーダーの意見に対する反論が出にくい環境では、メンバーは「組織の和を乱さない」という理由で異議を唱えにくくなります。
その結果、経営判断が偏り、企業の戦略が一方向に深化することで、外部環境の変化に乏しく、競争力を失うリスクが高まるのです。
実際、過去の企業不祥事の背景には、こうした集団浅慮が暗躍していたとの分析も存在し、意識的なリスク管理と多様な意見の収集が不可欠であることが明らかとなっています。
若手ビジネスマンが集団浅慮への対策として留意すべき点は、まず自己の意見を持つことの重要性です。
組織内での意思決定に参加する際、ただ従うのではなく、異なる視点からの批判的な問いを自ら提起することが求められます。
さらに、組織全体としても心理的安全性を高め、反対意見や異なる視点が受け入れられやすい環境作りに注力することが大切です。
このような仕組みが整備されれば、集団浅慮による無批判な合意形成を回避し、より質の高い、実行力のある意思決定が行われる可能性が高まります。
加えて、現代のデジタルツールを活用した情報共有や議論の場の設置も効果的な対策となります。
例えば、オンラインフォーラムや匿名で意見を投稿できるシステムを導入することで、対面では言いにくい批判的意見が表面化しやすくなり、結果として多角的な視点からの検証が促進されます。
このような手法は、急速な意思決定が求められる現代企業において、集団浅慮を未然に防ぐ有効なツールとして注目されています。
また、リーダーシップにおいても、メンバーの多様な意見を積極的に取り入れる姿勢が求められます。
リーダー自身がオープンな議論を奨励し、反対意見を排除することなく、批判的思考を促進する文化を醸成することで、集団浅慮のリスクを大きく低減することが可能です。
この点において、若手ビジネスマンもまた、将来的にリーダーポジションに就くことが予想されるため、自己の意見を明確にし、他者の意見に耳を傾ける姿勢を早期に養うことが重要です。
さらに、組織内で定期的に外部の視点を取り入れる仕組みを設けることも有効です。
外部コンサルタントの意見や、業界全体の最新動向を踏まえたディスカッションを行うことで、内部の偏った意見や閉鎖的な考え方に依存しない、より広範な判断材料が得られます。
こうした取り組みが、長期的に見れば企業の競争力の向上やイノベーションの促進につながるため、今後の経営戦略においても一層注目すべき点となっています。
まとめ
以上の議論から、集団浅慮(グループ・シンク)は、組織内の結束力や同調圧力が一定の役割を果たす一方で、極端な場合には意思決定の質を著しく低下させ、大きなリスクを生む可能性があることがわかります。
特に、急速な意思決定が求められる現代のビジネスシーンでは、個々の視点や異論を尊重する体制が求められ、心理的安全性を高める環境整備が不可欠です。
また、デジタルツールを活用した情報共有や、外部の知見を取り入れることが、閉鎖的な集団思考から脱却するための有効な手段として注目されています。
若手ビジネスマンにとっては、自己の意見を明確に持ち、批判的思考を通じて主体的に意見を発信することが、将来的なリーダーシップの資質を育む上でも重要です。
組織全体としても、反対意見を受け入れるオープンな文化を育むことで、集団浅慮に起因するリスクを最小限に抑え、より健全な意思決定が行われる環境を構築することが期待されます。
企業としても、戦略的な意思決定プロセスを再評価し、内部の同調圧力を和らげるための仕組みづくりに注力することが、今後の持続的な成長の鍵となるでしょう。
数年前にグロービス学び放題で一人で学んでいましたが今回ナノ単科に参加し仲間で学ぶことができ様々な気づきを得ることが出来ました。職種や年齢、立場を越えることで気づかなかった本質的な問題や学びを得ることができ感謝しております。