- AIDMA・AISAS基本概念
- 消費行動段階把握の重要性
- 柔軟戦略実践で成果向上
近年、急速なデジタルトランスフォーメーションの進展により、マーケティングの現場では従来の伝統的なモデルだけでなく、新たな消費行動のプロセスを捉えたフレームワークが数多く提唱されています。
中でも「AIDMA」と「AISAS」は、消費者の心理や購買プロセスを理解し、戦略や施策を構築する際に非常に重要な位置を占めています。
本稿では、AIDMAとAISASの基本概念と、その相違点および活用の注意点について、体系的かつ専門的な視点から詳述します。
これから事業を推進する20代のビジネスマンの皆様にとって、マーケティング戦略の立案や実践に役立つ情報をお届けできればと考えています。
AIDMA(アイドマ)とは
AIDMAは、1920年代にアメリカの著作家サミュエル・ローランド・ホール氏によって初めて提唱された、消費者の購買決定プロセスを説明するためのフレームワークです。
その名称は、Attention(注目)、Interest(興味)、Desire(欲求)、Memory(記憶)、Action(購買行動)の各要素の頭文字を取って構成されており、ユーザーが商品やサービスに出会い、興味を持ち、最終的な購入に至るその過程を順序立てて理解するための指標として広く認識されています。
具体的には、新しいスマートフォンを例に挙げると、テレビCMや雑誌、インターネット上で製品に触れた段階で消費者は「Attention」を受け、「Interest」によって製品への興味を深めます。
次に、実際に自分のニーズに合致しているかどうかを検討する「Desire」の段階を経て、ある程度製品情報を「Memory」に定着させ、最終的に「Action」として実店舗またはオンラインでの購入行動に至るという流れが描かれます。
このプロセスは、特に住宅や自動車のような高額で検討期間の長い商品群において有効とされ、マーケティング活動においては、消費者がどの段階にあるのかを正確に把握するためのテンプレートとして利用されています。
AISAS(アイサス)とは
AISASは、インターネットの普及が進んだ現代において、従来のAIDMAモデルを再定義するために電通が提唱した消費行動プロセスモデルです。
この名称は、Attention(注目)、Interest(興味)、Search(検索)、Action(購買行動)、Share(共有)の各要素の頭文字に由来しています。
インターネット上での情報収集が容易となった現代では、消費者は興味を抱いた商品やサービスについて、まずオンラインで詳細な情報をSearch(検索)し、検討を重ねる傾向が強まっています。
また、購入後にはSNSやブログ、口コミを通じてその体験をShare(共有)することが一般的となっている点が、従来のAIDMAモデルとの大きな相違点です。
例えば、あるダイエットプログラムやフィットネスサービスの場合、CMを見て認知した段階はAIDMAと同様ですが、その後ユーザーは気になる情報をインターネット上で検索し、自身の経験や周囲の口コミ情報を参考にして購買行動に繋げるという一連の流れがAISASモデルの基本となります。br>このように、情報の検索と共有が重要な要素として加えられているため、SNSなどのデジタルメディアを活用したプロモーション活動においては、AISASの活用が極めて重要です。
AIDMAとAISASの違いとその意義
AIDMAとAISASはどちらも消費者の購買決定プロセスを段階的に捉えるためのモデルですが、その基本的な枠組み及び活用されるシーンには明確な違いがあります。
まず、AIDMAはオフラインでの接点や、テレビ、雑誌、店頭での広告活動など、従来のマスメディアを通じたアプローチに非常に適していると言えます。
消費者が情報を受け取り、記憶に定着させるプロセスにおいては、視覚的な印象や反復的な広告露出が重要な役割を果たすため、Memoryの段階が強調される傾向があります。br>一方、AISASはインターネットを媒介とした情報収集や、SNSを介した共有といった現代的な消費行動に焦点を合わせ、消費者が自発的に情報を探索し、他者と共有するプロセスを重視しています。
このため、AttentionとInterestの後に「Search」という段階を設け、実際に消費者が自ら情報を掘り下げる過程を理解する必要があります。
また、Shareの要素に代表されるように、購入後の口コミやSNSでの情報共有が、新たな認知を生み出し、さらなる購買行動を促進するというネットワーク効果を狙った戦略が講じられる点が大きな特徴です。
このように、企業がマーケティング戦略を構築する際には、商材の特性やターゲット層の行動パターンに応じて、AIDMAとAISASのどちらのモデルを採用すべきか、または両者をどのように組み合わせるかを慎重に判断する必要があります。
AIDMAおよびAISAS活用における注意点
どちらのモデルも消費者行動を体系的に捉える優れた枠組みですが、適用にあたってはいくつかの留意点があります。
第一に、モデル自体に固執しすぎると、消費者の多様な行動を見過ごすリスクがあります。
マーケターは、各段階の指標を定量的・定性的に把握し、実際のユーザー行動との乖離がないか、常にデータを用いて検証する必要があります。
例えば、AIDMAにおける「Memory」の段階は、実際には消費者がどの程度情報を記憶しているかを厳密に測るのが難しいため、この部分に依存しすぎると購買意欲を正確に把握できなくなる恐れがあります。
第二に、AISASにおける「Search」および「Share」のプロセスは、インターネット上の情報環境やSNSの流行に左右されやすく、時代変化に応じたアップデートが求められます。
特に、SNS上での口コミやシェアの効果は、単に数値で表すことが困難なため、エンゲージメントやエモーショナルな反応を重視した柔軟な視点が必要です。
第三に、どちらのモデルも消費者にとっての「価値創造」を完全に説明するわけではなく、購買後のフォローアップやアフターサービスなど、顧客満足度の向上を図る施策との併用が不可欠です。
このような注意点を踏まえ、企業はモデルを単なるチェックリストとしてではなく、あくまで戦略設計の一助として柔軟に用いるべきです。
また、実際の事例として、資生堂がAIDMAモデルを活用し、CMや店頭での展開により消費者の認知や記憶に働きかけた成功例や、RIZAPがAISASモデルを活用して、検索や口コミにより継続的な顧客獲得を実現した事例は、現代のマーケティングの多様性を如実に物語っています。
まとめ
本稿では、AIDMAとAISASという二つの代表的な消費者購買行動プロセスモデルを取り上げ、それぞれの特徴と現代マーケティングにおける意義、さらに活用に際しての注意点について詳述しました。
従来のAIDMAは、テレビや雑誌などオフラインの広告媒体を通じた消費者接触に強みがあり、特に高額商品や検討期間の長い商材に対して有効です。
一方、AISASはインターネット時代の消費行動を的確に捉え、検索やSNSでの共有を通じた情報拡散のプロセスを明示しているため、デジタルマーケティング戦略において欠かせないツールとなっています。
それぞれのモデルは決して互いに排他的なものではなく、自社の商材やターゲットの特性に応じた最適な使い分け、または両者のハイブリッドな活用が求められます。
加えて、これらのフレームワークを活用する際には、単なる理論に終始せず、常に実際のユーザーデータや市場環境を分析する柔軟な姿勢が重要です。
今後も変化し続ける消費者行動に対応するためには、AIDMAやAISASといったモデルを基盤としながら、新たなデジタルツールやマーケティング手法を組み合わせて、より精緻かつ動的な戦略設計を進めることが不可欠です。
20代の若手ビジネスマンの皆様には、これらの考え方を実務に積極的に取り入れることで、競争激しい市場環境においても、質の高いマーケティング戦略を構築し、持続的な成長を実現していただけることを期待しています。
最終的に、消費者の購買心理の微細な変化に常に目を向け、柔軟な戦略変更を可能とする知識と実践力こそが、これからのビジネスシーンにおいて大きな武器となることでしょう。
実践を伴うグループワークがとてもよかったです